高温プラズマの計算機シミュレーションにおいても、他の計算科学分野
と同様に、大きなスケールの
巨視的現象 と小さなスケールの微視的現象
を扱う複数のコードが必要となります。これらの中間領域であるメソスケール
かつ粒子的描像の電磁現象
(粒子の軌道情報が大切)を扱えるようにした
のが、ここで述べるマクロ粒子コードです。

  主な応用は、運動論的アルヴェン波の研究、そして磁気リコネクション
の起源
の研究です。


メソスケール粒子コード

  ここでは粒子軌道の情報を残すことが必要なので、粒子コードから出発
することになります。しかし、プラズマでは「プラズマ振動」と呼ばれる高周波
振動があり、このモードを解く(含む)かぎり、シミュレーションの空間スケール
はデバイ長、時間スケールはプラズマ振動数に限定されます。このプラズマ
振動(固有モード)を消し去る試みが、1980年代アメリカのロスアラモス、
リバモア国立研究所を中心に行われました。

  前者は流体方程式に粒子の電磁的寄与をモーメントとして付け加え、

後方差分
を導入して高周波を除去、一方、後者は巧妙な数値ローパス
フィルターを構築し粒子のニュートン運動方程式に適用しました。前者は
流体と粒子の折衷部分に安定性と計算時間が長い難点があり、後者は
高精度ながら数値的に不安定でした。


私が採用した手法

  開発に参入したのが数年あとであったため、私は安定な後方差分
利用を採りました。私独自のアイデアは、
すべての未知量を粒子の
ニュートン運動方程式とマックスウェル電磁方程式だけで書き表した
部分
で、このため方程式の意味が明確で近似度が小さくなり、数値的に安定
で計算時間も短縮されました。

  得られた電磁場の方程式は、
既知の過去量と未知の未来量を含む
インプリシット連立方程式
で、その次元は3x(空間グリッド数)です。2次元
では比較的楽にインプリシット方程式の解は収束しました。
  ところが3次元では、1方向のグリッド数を50としても、約30万の未知量
を扱う必要があり、この解が収束する(求められる)ようになったのは、
超巨大非対称バンド行列をとくBi-Conjugate Gradient Methodを導入して
以降でした。

  マクロ粒子コードのアルゴリズムの解析的およびその数値的証明は、
下に挙げた1988年のJ.Comput.Phys.の論文に、また3次元コードの詳細と
数値的正確さの証明は1993年の論文に詳細を記しましたので、興味が
あればお読みください。


参考資料

高温プラズマの物理学   丸善パリティー物理学コース (1991, 1997)

マクロ粒子コードのアルゴリズムの証明  J.Comput.Phys., 79, 209 (1988).

3次元版のマクロ粒子コード   J.Comput.Phys., 107, 124 (1993).


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マクロ粒子シミュレーション法の開発