惑星磁気圏ショックの形成

太陽からは太陽風 と呼ばれる超音速のプラズマの風が吹いています。 中性流体では、超音速の流れが障害物にぶつかるとき、障害物の前面に 衝撃波が生じることは よく知られています。 同様に、太陽風が地球の磁気圏にぶつかるときに衝撃波ができるのでしょうか。 この問題は1960年代に大きな議論になりました。 人工衛星が実際に飛ぶようになってから、 衝撃波ができていることが確認されました。




衝撃波ができるかどうかという議論のポイントは、太陽風プラズマの粒子どうしが 無衝突という点です。 太陽風を構成するプラズマ粒子の平均自由行程は太陽地球間ほどの長さがあるため、 プラズマ粒子は無衝突と見なせます。 一方、衝撃波の生成にはなんらかの 散逸過程が必要です。 すなわち、太陽風中に衝撃波が存在するということは、 無衝突でも散逸をつくる 過程があるということです。 それが何かということが、研究のテーマになってきました。

ここでは問題を単純化するために、衝撃波面と磁場が垂直な場合(平行衝撃波)を 考えましょう。 私達はマクロ粒子コードを用いて、 平行衝撃波の再形成 について調べました。 再形成とは、周期的に、衝撃波がつぶれる、あるいは、弱くなり、それからまた、 強くなる現象です。 平行衝撃波の再形成は散逸過程に大きくかかわっていることが予想されます。 下の図は時間発展を追ったシミュレーションの、ある時刻における平行衝撃波付近での イオンの相図です。 横軸zは位置で、左から右へ太陽風が吹いています。 上の図(a)は磁場を表し、波がある,青い線のところが衝撃波になっています。 下の図(b)は、太陽風を構成するイオンの、右方向への速度をあらわします。 衝撃波のところで、速さが急激に下がります。 時間発展を見ていくと、 一度イオンの塊ができ、それがたまると下流に移動し、 またたまる、ということを繰り返しています。 これが平行衝撃波の再形成に対応しています。 図(b)の矢印は、過去の衝撃波でたまったイオンの塊が下流に移動したものです。 これは波に捕捉されたイオン で、周期は波の捕捉時間にほぼ一致します。 以上から、 捕捉イオンの動きが平行衝撃波の散逸に関わっていることがわかりました。(通総研 島津浩哲、京大理 町田忍、核融合研 田中基彦)




参考論文

Shimazu,H., S.Machida, and M.Tanaka, J.Geophys.Res., vol.101, 7647-7658 (1996).
Shimazu,H., M.Tanaka, and S.Machida, J.Geophys.Res., vol.101, 27565-27571 (1996).

Shimazu, H., J. Geophys. Res., Vol. 106, pp. 18751-18761, 2001.
(最新の研究については、通信総合研究所のホームページをご参照ください。)


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