マイクロ波オーブン(電子レンジ,500W程度)を使うと,水は
約1分間で沸騰する。これは紅茶やコーヒーを飲むときである。
それでは,凍っている「氷」 は,このマイクロ波オーブンでは
融けるだろうか?
水と氷は不思議であり,氷点を境にして両者は性質が大きく
変わっている。はじめに答えを言うと,氷はほとんど解凍できない。
氷は綺麗に6員環の結晶で凍っており,マイクロ波の電界は
氷点未満の水(つまり氷)には反応しないためである。
これは世界初めての研究であり,アメリカ物理学会の雑誌
Journal of Chemical Physics (Tanaka and Sato, 2007, USA,
下記を参照) で論文として注目された。
しかし,絶対温度273度(摂氏0度)において数10分間待てば,
「熱伝導」により氷点で氷は溶ける。熱伝導は冷たいものへ
熱が伝わる現象であり,マイクロ波効果とは異なりゆっくりと
した現象である。
そのあとの零度以上では,マイクロ波オーブンの電場と「水」は
よく反応して加熱される。なお,実験的には,摂氏0度において
マイクロ波の加熱効果は極大である。温度が上がるにつれて,
相互作用は弱くなり,時間当たりの温度の増加率は小さくなる
(お湯が沸騰する前は,マイクロ波の効果は弱い)。
English
Microwave heating of water, ice and saline solution:
Molecular dynamics simulation, J.Chem.Phys., 126, 034509 (2007).
論文参照 PDF
計算機シミュレーションで物理学を研究する
マイクロ波オーブンで氷は溶けるだろうか? (大学工学部紀要)
Molecular dynamics simulations of ice and methane hydrate
by means of the rotation coordinate TIP5P-Ewald model (2024)
arXiv.org: 2311.01182v8
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