マクロイオンの大きな電荷反転の現象 + 並列計算の方法
Giant charge inversion of a macroion due to multivalent counterions
and monovalent coions: Molecular dynamics study

M. Tanaka and A. Grosberg, J.Chem.Phys., 115, 567 (2001)  Charge inversion.

シミュレーションコードの公開
https://github.com/Mtanaka77/

高分子の生体現象では,大きな電荷反転の現象 (電荷の中性条件
を大きく越えた正電荷) が起きている。これを応用すると,微小DNA
の輸送などが可能である。

これが起きるためには,2つの条件が必要である。すなわち,
1) マクロイオンから見て,2価以上の対イオンがあること,
2) クーロン相互作用が熱的レベルを越えて起きること。

Langevinの熱浴効果がクーロン力,LJ力に加わるため,マクロ
イオン(負電荷) の表面近くに正電荷のイオンが集まっている。
反発力で振動する正と負の電荷とは違って,生体では熱浴による
温度調節(thermostat) が効いて,普通に振動は減衰していく。




ここでは,マクロイオン,正負のイオン、中性の水分子を扱って
いて,正方形の周期的境界条件を与えている。マクロイオンは,
Q_mac=-30e, R_mac=5a, M=300mで,正電荷イオンは110個,
負電荷イオンは300個,正方格子の約67 オングストローム,
水分子は 約3.2 オングストロームごとに存在する8000個である。

価数が2価原子ではCa, Fe, Zn,3価原子ではAl, Feなど,分子
イオンではPO4^4- などがある。錯イオンでは, 1価の[Al(OH)_4]^1-,
2価の[Zn(NH3)^4]^2+, 3価の[Fe(CN)_6]^3-, 4価の[Zn(OH)_4]^4-,
[Fe(CH)_6]^4-, などが応用に使える。

(CGS系:e=4.8x10^-10 esu, a=1x10^-8 cm, m=1.66x10^-24 g,
..\epsilon=78, Zcn=3, Zcn=-1, Zwat=0)。

*) 計算する上で大切なことは,クーロン力が近距離力と遠距離力
をあわせて計算している。2つの相互作用を分けていることで,
良い精度でクーロン力を計算できる(
cf. Deserno and Holm, 1998,
https://github.com/Mtanaka77/Charge_inversion...
)。


* FortranとMPIで並列計算の方法

高性能の6-12 Core以上をもつパソコンでは,Fortranを使い並列
計算MPI で効率的に分子動力学シミュレーションを計算できる。
Linux 64bit PCが勧められるが,Windowsパソコンに VirtualBoxを
環境窓に置いて,Linux内で使える。このときLinuxのコマンドを使う
ために修得することが大切である。

高速な計算のため,Fortranとあわせて,MPICH,FFTW3の
パッケージが必要であるが,パソコン以外はお金が不要である。
複数コアで並列計算するためMPIのコーディング法では,並列処理
が可能な部分をコアに割り振って計算する。多くの場合,現行の
並列計算がベクトル計算よりも演算速度が数倍程度速くなる。



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